Interview | コーヒー&ローストNATTS(ナッツ)門柳秀子

Interview | コーヒー&ローストNATTS(ナッツ)門柳秀子

「オープン当時、業者さんからいただいたのよ」とママ

飲んだ方が次々と常連のお客様に

⏤⏤オープン以来変わらないスタイルというのがステキですね、30年という歴史を感じながらいただくコーヒーも格別です。

カウンターにコーヒー豆のケースを置いているでしょ? 当初は今の倍の大きさだったのよ。オーダーの9割をオリジナルのナッツブレンドが占めているから半分に減らして。ナッツブレンドの人気はそのくらい根強い。うちは直の通販はやっていないけど、遠方からLINEやお電話で直接注文くださるお客さんが結構いらっしゃって。「コーヒー送って」とおっしゃるのはほとんどがナッツブレンドのこと。暗黙の了解でやっているね(笑)。

⏤⏤なるほど。

振り返るといろいろ思い出す…ある時に身体を壊して入院していたことがあったんだけど、ちょうどその時に注文をいただいてしまって、「入院中でコーヒーを送れないんです」と連絡したら、こうおっしゃったの。「私はあなたのコーヒーが好きだから待っているわ。元気になった時にコーヒーを送ってね!」って。それがすごく嬉しくて。

⏤⏤なんてステキなお話。

今でも心に残っている出来事だね。

⏤⏤こちらへは何年も来ているけど、私自身もナッツブレンドしか飲んでいないような(笑)。一番人気のナッツブレンドはどのようにして生まれたんですか?

ナッツブレンドは当時ものすごく模索したんだよね。閉店後にどれだけ試行錯誤を繰り返したかなってくらいに。焙煎しすぎてうまく焼けなかったり、どうして思うような豆が焼けないんだろう?って涙することが何度あったことか。

⏤⏤それがどのようにして完成していったのですか?

ナッツブレンドはさっき話したパートへ行っていたお店と同じブラジルのお豆をメインに配合しているのだけど、あるモノをただ加えていくのではなく、料理で言う”隠し味”を入れるといいんだってことにある日気づいたわけ。そうしてようやく完成したのよ。

⏤⏤隠し味ですか。そこに至るまでにどのくらいかかったのでしょう?


オープンから1年後くらいだったかな。それまでは豆がちゃんと焼けないとか、味が良くないとか。本当に苦戦して。OLしていた方がやっぱり楽だったかなって思うこともあったね。だけど、当初教わったレシピ通りにやっていたのを少し変えてみようってアレンジしてみたら、自分の思う味ができたという。

⏤⏤そうだったのですね。だけど、強運の持ち主としか思えない絶妙のタイミングとご縁によってスイスイと泳ぐようにオープンされたのには驚きです。コーヒー屋さんのパートも偶然だったわけですよね。

そうそう。当初は暇だから何かないかなって探していたくらいだから(笑)。流れに乗ってひとつひとつ積み上げてきたという感じだね。OLの仕事も辞めていたし、“ここ”でお店をやることが私の長年の夢だったから、その時は「いよいよ開業するか!」という気持ちで挑んだというか。

⏤⏤いいお話ですね。ナッツブレンド。私自身、酸味の強いものよりもやや深めの焙煎が好きなので、こちらへ来た時からずっとお気に入りです。

ああ、それは嬉しい!

⏤⏤オリジナルブレンドを作る際にはどういうイメージをお持ちだったんですか?


一言で言えば飽きのこないもの。それに尽きる。私も自分がどっちかと言えば香ばしい方が好きだからそういう味になっているというのもあるかな。で、私は毎朝2杯分のコーヒーを作るんだけど、朝に1杯飲んで、お店を終えてひと息つく時にまた飲むの。でも朝作ったものを夜飲んでも酸化していないし、普通に美味しいんですよ。

⏤⏤本当にそうなんですよ。冷めても美味しいというのは深煎りしているから酸化しない、ということですか?

いや、豆の鮮度の違いだと思う。うちは焙煎したものを置いておくことは基本的にはしない。1週間も2週間も置いている豆はないんですよ。ありがたいことに焼いた豆は大体すぐに売れるから。発送用に焙煎する時には直感で少し余分に焼いておくんだけど、それも店頭でさっと売れていく。大体いつもそんな感じなのよ。今日もまた長年のお付き合いのある整骨院さんへ発送したところなんだけど。

⏤⏤ママからお話を聞いていると、長年のお付き合いというお客さんが本当に多いですよね。

本当に長いね。私が入院していた時に連絡をくださったお客さんは学校の先生だったんだけど、その方は通勤時にうちの前を自転車で通りがかってたまたま豆を買ってくれたのがきっかけ。美味しかったからとその後もずっとお付き合いがあって。お中元やお歳暮、ギフトにはいつもうちのコーヒーを買っていただいていたくらい。その方のおかげでうちのコーヒーを贈られた方がどんどん新しいお客さんになっていくという感じだったかな。そうやってお客さんが次々と増えていくから、実はうち、お会いしたしたことのないお客さんも多いのよ(笑)。

⏤⏤えーっ(笑)。最初からずっと電話やLINEで?

そう。それがね、その先生が亡くなったと身内の方からご連絡をいただいたというか…義理の息子さんのお母様から注文いただいた時に聞いて。すぐにお線香をあげにご自宅へ行ったね。先生とのお付き合いで私がどれだけ励まされたかわからないから。その方の旦那さん…いや、ほかにも、その方の義理のお嬢さんのお母さん、婿さんのお母様も同様。今でもずっとうちのお客さんでいてくださるのよ。

⏤⏤豆の美味しさはもちろんだけど、加えてママのお人柄の良さもありますね。

それはわからないけどね。そういうこともあったし、やっぱりコロナで何ヵ月も休業していた時には常連のお客様に何かしたいって気持ちが溢れて手作りマスクをお送りしたこともあったね。マスクを100枚以上は作ったんじゃないかな。あの時ってみんながマスクを買えなかったじゃない?

⏤⏤ですね。

自分自身もマスクがなくて困っていたし、ミシンを持っているから型紙をネットでダウンロードして作ってどんどん郵送して。そしたら皆さんからお礼のお電話やお手紙をいただいて本当に嬉しかった。いつもお子さんを連れてこられるお客様のお子さんが「おばちゃんのマスクが一番柔らかくてきもちよかった」って言ってくれたりね。

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