Interview | SAGOSAID

Interview | SAGOSAID

©︎Ayumi Tsubouchi(VAMP!/CHICKS RIOT!)*

「フェミニストです」と言うと引かれるじゃないですか?
だから“ギャル”って呼んでいます

――(笑)秋に発売された2ndカセットは、バンド感が前面に出ましたね。

 

SAGO 前作を出したのちに今のメンバーが揃ったので、新作ではバンドっぽい曲を作ろうと思っていたんです。今回は宅録ではできない「Spring is cold」をバンドで録ってA面に、あとB面には自分の気に入っている曲を持ってきてって。

 

――A面、B面での曲の対比がグッときます。

 

SAGO ちょっと激しめのA面に対して、B面ではゆったりとしていますもんね。どちらもメトロノームを使わず、一発録り。そこはこだわりました。

 

――佐合さんがパンク期を経ているから、she saidからするとヘヴィさもあるし、音もゴリっとしていますよね。

 

SAGO それ、絶対にあります(笑)。

 

――あと、「埋もれているヴォーカルが好き」だと前に言っていましたね?

 

SAGO そうなんですよ。90年代ロックのヴォーカルって音量が小さいバンドが多くないですか? スーパーチャンクの昔の音源もメロディ良いのになぜか声が小さい…ヴォリュームを上げてもやっぱり聴こえない。楽器がいっぱい鳴っているやんって(笑)。でもそういうのが良い! だから歌をそこまで小さくしなくてもいいけど、そんなに大きくしなくてもいいかなって。

 

――ニルヴァーナの初期とか、すべてが一斉に爆音っていう感じですよね。

 

SAGO そういうものから無意識に影響を受けていると思う。今では機械でどうとでもなるけれど、そういうニュアンスをあえてやっていますね。難しいのはローファイってそれしかできないというところにカッコ良さがあるのに、意図的にやるのはローファイの精神性に反していやしないかって。そこに葛藤があるんですよ。とはいえ、やりたいからそこはパンク精神でやってやれって。音楽って精神性を求め始めると何もできなくなることがあるから厄介ですね(笑)。

 

――場合によっては身動き取れにくくなっちゃうから。そういえば、90年代にストレートエッジだからって突然肉食を断った友人もいました。一時期でしたけど。

 

SAGO もう肉くらい食べるよって(笑)。ほんと、人に何かを強要しないでほしい。大学生の頃の話だけど、純粋にいい音楽を薦めてくれるわけでもなく、「あのバンドを聴け」「このレコードを聴け」とか、「これを知らないなんて音楽詳しくないな?」とか周りの男の子によく言われていたんですよ。当時はそう言われると、確かにたくさん知っていることが偉いと思って、何も言えなかった。でも、うるせえ!  ムカつくわ!  聴きたい音楽を聴かせてくれよ! 音楽詳しくないと音楽やっちゃいけないの?って、いつからか思うようになって。それで自分のことを“ギャル”と名乗るようになったんですよ。「私はギャル」と言うことで自分の道を行くって伝えていこうと。

 

――なぜ“ギャル”なんですか?

 

SAGO 少女漫画『GALS!』世代でよく読んでいたし、ワードとしても、主人公のキャラも含めて自分には馴染みがあるんですよ。最近この漫画が復活して連載が始まったりして盛り上がっているし、世間でも“ギャル”の波が来ているって感じていて(笑)。で、そう宣言するようになったら、前ほど周囲から言われなくなったので、自らでそういう雰囲気を打ち出していくことの大事さを知りました。この話が記事になって、例えば「佐合さんは人からガタガタ言われるのがイヤなんだって」ということだけが広まって、人から良い音楽を薦められなくなってしまったら、それは違うんですよ…(汗)。やりたいことをやるのに男女は関係ないはずなのに、どうしてこういう状況が付いて回るの?という問題。

 

――そんな時にライオットガールの存在を知ったそうですね。

 

SAGO はい。気づくのがだいぶ遅かったけど、名古屋で知り合ったyepというバンドをやっている石田くんに、「佐合さんはライオットガールだから読んでみてほしい」ってライオットガール関連のzineをもらったんです。それを読んで、過去にいろいろ言われてきたことをバカみたいに正面から受け止めなくて良かったやろ?って思い直しました。もちろん、何かを強要してくるのはほんの一部の人。理解のある人はたくさんいる。だけど、女性がこういう話し始めると途端に極端な結論に行きがちで、結局何も言えなくなってしまうというパターンが多いから、そこは誤解のないように伝えたいです。ほんと、難しいですね。

 

――VAMP!やCHICKS RIOT!をやっていることで、たまに海外の方から取材されることがあるんですけど、その中で「ロックシーンの中で女性はどういう扱いをされているか?」と質問を受けたこともあって。でも、それってシーンではなくて個人、なんですよね。

 

SAGO そう!

 

――ライオットガール、つまり “フェミニズム”という言葉に対しても、さまざまな捉え方があるから、抵抗を感じる人もいるし、逆に関心のある人たちの中でさえ、その認識はそれぞれ。

 

SAGO そう。だから何も言えない。この間、SHEER MAGが来日して名古屋にも来たんですよ。彼らのインタビューをzineで読むと、ティナ(Vo)以外は全員男性で、ティナは自分をフェミニストだって言っていて。私はその記事でフェミニストという言葉を知って、そこからライオットガールの存在に気づいたんですよ。だけど、「フェミニストです」と言うと、引かれるじゃないですか? それで私は自分に馴染みのあるワードでもある「ギャル」って呼ぶようにしたんです。

 

――なるほど。そこも含めての“ギャル”だったんですね!!!

 

SAGO 強くなろう!と思って(笑)。

 

――(笑)良いですね。VAMP!本誌でベルリンのアートコレクティヴ集団CHICKS ON SPEEDにインタビューをしたことがあって、彼女が言ったことが私には一番しっくりきているんですよ。「私にとってのフェミニズムとはクリエイティヴでいること」。確か、レインコーツも同じことを言っているんですけど。でも世の中でフェミニズムと言うと、対男性への怒りだったり、男性に負けたくない女性みたいに捉えられていたり、そう捉えていなかったとしてもこうと決めつけられがち。だから気軽に言えない空気もありますよね。

 

SAGO 私もちゃんと理解していない時は「男に負けない」ものだと勘違いしていました。でも、今は違う。自分に向き合い続けることが大事なのかな。「この本を読め」という話でもないし、「こうだ」という答えもないから、本当に難しい。ただ、こうして人と話していくことは大事ですよね。私は今男の子たち3人とバンドやっていて、世間話の流れから下ネタになったとしてもみんなと一緒に笑っていることもあるし、私だけ女性だからって“紅一点バンド”と呼んでほしくないと思う自分もいるから、「もうどうでもいいわ!」っていう結論になりそうになるんですけど、そうするとそこで思考が停止してしまう。それもイヤだなって。

 

――だけど、結局のところ、自分のやりたいことが自然にやれたらそれでいいっていう感覚だったりしません?

 

SAGO そう! やりたいことを自然にやりたいだけ。それなのに周囲があれこれ言うから不自由な気持ちになるという。

 

――そして、そういった問題を伝えたい時に、フェミニズムと言った方がわかる場合もあって。

 

SAGO そうなんですよね。フェミニストかどうかとか関係なく、「やりたいことをやりたいだけ」っていう話は私の周りでもよくしているんですよ。仕事しに東京へ来たのに親が厳しくて「実家へ帰って来い」と言われて喧嘩して泣いた…でも結局帰らなかったって友人が話してくれたり。私の場合、実家で弟には門限がないのに私にはあるとか、ノースリーブの洋服やミニスカートを着ていると「なぜそんな洋服を着ているの?」って言われるとか。結局、私たちが女子だからそういうことを言われるんですよね。これまでは、それを「女の子だから」と言われて仕方ないと思ってきたけど、「いやぁ、おかしいだろ?」って。女の子は好きな洋服も着れないのかよ?って。

 

――親が女の子たちにそう厳しく口を出してしまうのは、女の子が危ない目に遭う可能性の高い社会があるから、ということもありますね。

 

SAGO その友人たちとも、まさにそういう話をしていたんですよ。だからって、そこでわざわざフェミニズムというワードを持ち出すのもちょっと違和感があって。何度も言っているけど、だから私は自分を“ギャル”と呼んでいるんですよ。イヤなものはイヤって言っとこう。改めてそう思いました(笑)。こうして人とフランクに話していくということは本当に大事。

 

――フラットに喋れる場所があったらいいですよね。

 

SAGO 私の周りにいる友人たちもライオットガールのことを知らなくて当然だし、私だって少し前まで知らなかったし、今でもそこまで詳しいわけでもない。そして、特にみんなが強くあれとも思わないし、自分がいいって思うままに生きることが一番いいって思うんですよ。

 

――そうそう。VAMP!で時々書いているのだけど、90年代にライオットガールのムーヴメントで私が救われた気持ちになれたのは「あなたはあなたのままでいい」というメッセージを受け取ったからなんですよ。

 

SAGO 本当にそれ、ですよ。精神の発散の場ということを考えても、結局音楽を作るということが自分にとってはいいんだなってつくづく思います。セラピーみたいなところがあるから。ただ、ガールパワーをテーマにした曲を耳にすると、曲そのものがどうということではなくて、“それ”を強調していくことについては難しいなって感じてしまう。わざわざ言わなくてもやりたいことをやっているだけじゃんという気持ちと、でも言わないと伝わらないからという、両方の感情が同時に沸き起こるっていうか。

 

――確かに。男性も同じだけど、女性個人が自分の意思で選択できることというのが一番重要。女性全員が家事から解放されたいと思っているわけでもないし、専業主婦で生きたい人もいればキャリアを突き詰めたい人もいる。自分の選んだことをやる、やれるようになるということが何より大事かなって。

 

SAGO そう。専業主婦をバカにするような風潮も本当にイヤ。何度も言っているけど、もう生きたいように生きているだけなんだよ、何も言ってくんな!って感じですよね(笑)。

 

――(笑)その人が好きに選択できて、その日常を愛せればOKじゃないかと。

 

SAGO 夫婦別姓問題やセクハラも気にする人とそうでない人と 両方いたりもするし。違和感感じていない人にわざわざ問題をふっかけて「怒れ!」とは思わないし、悩ませる必要はないし。本当難しいなあ…。

 

――その人が苦しいと感じたら、それは問題だという。

 

SAGO そうなった時には救われたいし、助け合いたいし。日々こういうことを考えているんですけど、難しいですね。考えすぎると死にたくなってくるので、あ、早く曲を作ろうってなります(笑)。

 

――曲作りのモチベーションはそういうところから来ている感じですか?

 

SAGO かもしれない。直接歌詞として表現することはないんですけどね。週5で会社へ行っているから仕事が忙しくて、音楽聴いたり、映画を観たりする大好きな時間が削られてしまい…仕事して眠って、仕事して眠って、ライヴしたら1ヵ月、2ヵ月経過しているっていう…本当に焦燥感がすごいですよ。まあ、それでも喜びが大きいからやっているんですけど、音楽をやることで収入があるわけでもなく、本当に趣味の世界。好きでやっているからこそ、興味が無くなったらやめる。それが一番ですよ。

 

――ただ、SAGOSAIDは始まったばかり。これからも期待していますよ!

 

SAGO はい、もちろん!(笑) 

 

――今後考えているプランはありますか?

 

SAGO カセット3本並んでいるとモノとして可愛いから、カセットをもう1本出したいと思っています。あと1本出したらアルバム製作にかかりたい。今はライヴへ誘われると出るみたいな形を取っていて、それも楽しいけど、自分の企画をやったのは1本目のカセットを出した時だけなので、次は女の子企画もしてみたいですね。今年SaToAと企画をやった時も楽しかったんですよ。ありがたいことにSAGOSAIDいいねって結構言ってもらえているから、これからもパンク精神でやっていきます!

 

©︎Ayumi Tsubouchi(VAMP!/CHICKS RIOT!)*

SAGOSAID
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