

80年代のマッドチェスターのダンスビートとThe Go! Teamカラフルなミクスチャーが溶け合う、予想不能なカオスポップ。2025年にこんな音楽と出会えるなんて! 映像作家のiramina (Vo/G)率いるPuffは、音楽とヴィジュアルで独自の世界を繰り広げる4人組。
「マンチェじゃん」「The Go! Teamじゃん」。そう感じた第一印象を超え、J-POPのようなキャッチーなメロディ、渋谷系の洗練されたセンス、キラキラとしたシンセポップを織り交ぜたクールでキュートなミクスチャーロックを響かせる彼ら。その醍醐味は何と言ってもライヴ。VJ(ヴィジュラルジョッキー)が映し出す映像とシンクロさせたパフォーマンスを展開し、ロックのエネルギーとダンス音楽の高揚感でフロアをあっという間にカオスな世界に変えてしまう。また、iramina以外のメンバーもクリエイターであり、M Vやアートワークは自らが手がけるというDIY精神は、もはやバンドの枠を超えたアート集団と言えるだろう。
今年で結成3年目のPuff。代表曲の「Bad Week」を含む全4曲をサブスクで配信中。唯一のフィジカル音源であるカセットテープ「P Is The Heavenly Option」はVAMP! SHOPで入手が可能なので、ぜひチェックを。
知るほどにハマるPuffの魅力。その中心人物のiraminaにバンドの結成秘話とクリエイティヴの裏側を聞いた。
Member iramina(Vo/G) remi(Vo/synth) kubo(G/synth) sanuchida(Visual Jockey)
Interview / Text Ayumi Tsubouchi
アマチュアイズム最高
⎯⎯イラミナさんがPuffを始めるに至るまでのお話を聞かせてもらえますか?
はい。僕、元々はベーシストなんですよ。高校時代からソロをやるまでずっとベーシストとしてバンドをやっていたんですけど、そのバンドを辞めて上京して、東京でやっていたバンドも辞めてしまって。で、今度は曲作りをやりたい。歌も歌いたい。自分主導のバンドを始めたいって思うようになったんです。2018〜2019年のことだったかな。
⎯⎯それでPuffを?
いや、、、バンド人生こそ長いけど、曲作りの経験も浅かったし、自分で曲作りをして自分で歌う、いわゆるフロントマンとしての経験もなかったから一旦ソロをやろうと決めたんです。それなら誰にも迷惑もかからないし、仕事と両立もできると思って。僕、結構ビビリで(笑)。
⎯⎯(笑)それが”こみゅにけいしょん”だったんですね。
はい。曲を作ってみたら案外いいねって反応も良くて、曲作りにも慣れて自信もついてきて。3〜4年経った頃かな。ようやく「やっぱりバンドだ」と。バンドが好きだという気持ちに改めて戻って始めたのがPuffなんです。
⎯⎯そうだったんですね。
バンドマンとして多少キャリアのある僕が、自分で歌って曲を書いてっていう自分主体のバンドをやるのは、本当にこれが初めて。だから今正直気持ち的には高校生のような気分ですよ(笑)。今年で結成3年目になりました。
⎯⎯最初からある程度のヴィジョンがあったんですか?
正直そんなになかったです。自分は何が作れるのかとか、何が好きなのかとか、最初はソロでライヴしやすい音楽性を探っていく感じで。僕80sポップが好きで、ニューロマとか、あとダッサいシンセポップとかもう大好物(笑)。カルチャークラブやデュラン・デュランとか、世代でもないのになぜか懐かしい、、、グッときちゃうんですよ(笑)。こみゅにけいしょんはそういう80sサウンドっぽいものをやっていましたね。あとはしっかり歌うというよりは少しズラした方が自分に合っていると思ったので、ラップっぽいノリで歌ったりとか。
⎯⎯うんうん。
フリッパーズ・ギターが元々好きで、前にやっていたバンドもわりとネオアコっぽい感じだったんですよ。自分の音楽的影響に小沢健二という人のウェイトが結構あるので、そういうイメージも何となくありましたね。
⎯⎯そこからPuffへ発展していくわけですね。
Puffに関しては当初から男女混成ツインヴォーカルの想定があったんです。The Go! Teamやロス・キャンペシーノスみたいにガチャガチャしていて楽しげなロックバンドっていうイメージがあって。自分が10〜20代前半に聴いていたものを素直にやりたいっていうのはありました。
⎯⎯メンバーは最初から6人編成だったんですか?
そうですね。ドラムとベースは今サポートメンバーですけど。メンバーはいろんなことを許してくれそうな人を誘っていったんです(笑)。僕が曲を作らないと始まらないし、曲を作り続けないとみんなの人生を無駄にさせてしまうんじゃないかって強迫観念が凄くて。僕本当にビビリで(笑)。
⎯⎯(笑)で、知り合いにどんどん声をかけていったと。
remiさん(Vo/synth)もギターのkuboくんも音楽を通じての知り合い。VJのsanuchidaはバンド経験のないメンバーなんですよ。僕、映像制作会社で日々映像を作っているんですけど、彼女はそこの同僚で。最初からVJを入れたいという想定があって、でもさすがに演奏しながら自分でVJをやるのは難しいからぜひって誘ったんです。ハッピー・マンデーズのベズとか、電気グルーヴのピエール瀧とか、楽器を持っていないメンバーの存在が凄く好きなんですよ。ステージにメンバーがたくさんいるって楽しげでいいじゃないですか。バンドの多様さが出るし、メンバー全員が一生懸命楽器弾いている中でひとりくらいそういう存在がいる方がいいしって。
⎯⎯わはは、確かに。
あと、そもそもバンド未経験の人がメンバーにいるというのが好きなんですよ。根源的な楽しさを追求できる気がして。アマチュアイズム、最高です。
⎯⎯ライヴを観ていて驚いたんですが、sanuchidaさんはVJをしながら歌も歌っていますよね?
あ、歌っていますね(笑)。本当は全員で歌いたいくらいなんですよ。やっぱりシンガロングする音楽が好きで。
⎯⎯何人かでヴォーカルを取るといえば、OCHA∞ME。女の子たちが楽しげに歌っている感じが最高ですよね。
マジでそうなんですよ。パクるとかじゃなくてOCHA∞MEは凄く意識しています。OCHA∞MEみたいな存在がシーンにいるっていいですよね。みんな楽しそうで。OCHA∞MEもバンド経験のあまりないメンバーがいると聞いて、ますますいいなって。やっぱりバンドも、楽器も、誰だってできるっしょみたいな感覚が僕はいいと思っているし、そういうカルチャーが好きだから。sanuchidaさん、今すごく頑張ってくれていると思うんですけど、そもそもはそういう感覚でやっています(笑)。